引用
北海道の零下の冬で部屋に暖房なし 障害者による「奴隷労働」の実態
「奴隷労働だ」 北海道恵庭市の牧場で長年虐待されていたとして、知的障害のある60代の男性3人が市などに損害賠償を求めた訴訟がある。経営者家族は取材に対し、「虐待はしていない」と否定しているが、実際はどうだったのか。 【写真】「奴隷労働」をさせられたと訴えた原告が住んでいたプレハブ小屋 3人と長く交流のあった佐藤さん(40代男性)が、仮名を条件に朝日新聞の取材に応じた。佐藤さんの証言から、3人の置かれた境遇を構成する。 真冬の恵庭市では、気温がマイナス10度を下回ることもしばしばある。 佐藤さんによると、3人は母屋とは別のプレハブ小屋に住んでいた。 1人1部屋ずつ割り当てられていたが、ストーブが使えたのは1部屋のみで、それも小さなものだった。残り2部屋のうち片方の部屋にはストーブがあるものの、「値段が高い」という理由で灯油を入れてもらえず、使えていなかった。もう1部屋のストーブは取り除かれていた。 部屋に暖房器具がない2人は、寝袋の中に入ってその外側から汚れで黒くなった毛布を巻き、顔だけをだして凍えていたという。 訴状によると、小屋に水道や風呂は無かった。また、飲用水を保管するペットボトルは、ボウフラがわく不衛生な状態だったという。さらに、3人は午前3時半に起床して日没まで牛のえさやりや農作業をこなしていて、ほぼ休日は無かったとしている。 原告側は、恵庭市の責任についても言及。訴状によれば、市は遅くとも2017年1月に状況を把握していたのに、経営者が元市議会議長だったことから詳しい調査をせず、隠蔽(いんぺい)したと主張した。(石垣明真、上保晃平)
追加記事:
男性は、近くの「遠藤牧場」に住み込みで働いていた。男性ら知的障害のある60代の3人は今年8月、この牧場で長年「奴隷労働」をさせられていたとして、経営者家族と恵庭市に計約9400万円の損害賠償を求め、札幌地裁に提訴した。
一方、経営者家族は取材に「虐待はしていない」と否定している。
3人と長く交流のあった佐藤さんが、仮名を条件に朝日新聞の取材に応じた。その証言から、3人の置かれた境遇を構成する。
佐藤さんは、男性と初めて会話した翌年、アルバイトを頼もうと遠藤牧場を訪ねた。男性自身が「やれることがあったら声をかけて」と話していたからだ。
経営者の遠藤昭雄氏(故人)に持ちかけると、強い口調で返された。
「こいつらは何言っても理解できない。相手にするだけ無駄だよ。障害者なんだから」
その後も、聞く耳を持ってもらえなかった。
心配になった佐藤さんは月に2~3回、こっそりと食料の差し入れを始めた。
実際に3人の様子を見に行くと、牧場から与えられていた1回の食事は、パン1個やカップラーメン1杯などだった。昼食と夕食をプラスチック容器に入れてまとめて渡されることも多かったが、部屋には冷蔵庫はなかった。
外から施錠された部屋に、トイレは無かった
3人が住むのは、遠藤家が住む母屋とは別のプレハブ小屋。それぞれが個室で暮らしていた。佐藤さんはそのうち、1人の部屋に夜、外から鍵がかけられていることに気づいた。
最初に話しかけた男性に聞く…