十二月三十日(土)
片岡鉄兵君、和歌山の知人宅で死亡。その内輪の葬式をやるとのことにて赴く。生命保險を十万円つけてあったとのことで、未亡人は路頭にまず迷うまじ。
末次信正海軍大將死すとの報あり。彼は日米戰爭論者の巨頭である。徳富と末次に対しては、この戰爭が日本にどういう結果をもたらすかという事実を見せてやりたかったが。
家妻が鮎沢君を訪問した帰りの電車の中の出來事――ある妻君が「今夜あたり、またアメリカのお客樣がくるだろう」と言った。これを聞いていた憲兵が、横手でひどくこの婦人をなぐりとばして負傷させた。「電車の中ではどんなことも言えません」という。