十二月十六日(土)
昨夜は空襲警報鳴らず。非常によく眠れた。なんだか落し物をしたような気持ちである。
夕方清野道之君が遊びに來る。同君の話――
松本の駅長がスパイだというので大騷ぎをした。駅長のところへ色々の物が届けられる。駅員が不思議に思っていた。あるとき彼の留守にするめが届いた。そこで駅員がこれを灸ると、英字が現われた。それがスパイの通信だというので捕われた。そして銃殺されたという噂がある。眞偽はともかく、彼が駅からいなくなったことは事実である。
このほかにも、もう一人松本にスパイがいるということを、女学生までが噂しているというのである。船があまり沈められるので、スパイの仕業に違いないと騷ぐのである。
大本教の予言が当ったとかで、信者がまたふえたそうだ。