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清沢洌「暗黒日記」s19中央公論社長更迭命令

七月三日(月)
 朝早く軽井沢に來る。偶然、高崎から蝋山君の乘り込むに逢う。蝋山君から島中君の中央公論社長辞職問題をきく。
一、蝋山君に代行社長になってくれと交渉があったが辞退した。
二、神奈川の特高課長が島中君の訊問が終ったとき、「結果はいずれにしても、社長はやめてもらいたい」と申し込んだ。その後、一週間に一回くらいずつ呼出す。病気だと言っても、「病気だって構うもんか」といった調子。もし、呼出しに応じなければ檢挙するといった模樣である。
三、島中君が南病院に入院したときに、夫人が祕書の藤田君を伴って、その旨を神奈川県警察へ釈明に行った。
四、島中君は、杉森孝次郎早大教授)、大熊信行(評論家)、蝋山政道馬場恒吾の諸君を病院に招いて、その前日かに警察に社長をやめたことを申出たことを話して、善後策を相談したとのことである。
五、これは政府権力を利用して、三十台の青年官吏を中心に、中央公論乘取り策をやっているのだ。はじめ島中君は自分がやめて、代理社長をあげるつもりであったが、それでは「政府」が承知しない。官選社長を出し、彼ら自ら言論機関をやりたいのである。現に「改造」の山本実彦が「改造」廃刊届を出したが、政府はこれを認めないといっているとのことだ。
六、彼らがこうした出版界に干渉することになったのは、内務官吏が飮む機会をつくる目的にあるらしい。大藏省、農商省などはそうした外郭団体を沢山もっている。が、内務省にはそれがない。そこで出版界に目をつけたのだ。彼らは直接に干渉し得るところに、利権をもって割込むのである。通信院が放送局や電気事業界に、外務省がニッポン・タイムスや外政協会というようにである。彼らはこの目的のために問題を起しておいては人を変え、自分の都合のよいような人物をあげて飮む機会を作ったり、友人に恩を売るのだ。かくしてその外郭団体はますます拡張される。目的がこれだから、彼らは統制の必要のないところでも、無理に統制をやる。
七、内務省特高あたりが、そういうことをやり始めると、現代においてこれを是正する方法がない。中央公論のごときは、その信用から言っても立派なものであり、交友範囲も広く高い。しかるにそれをもってしても、下級刑事の獸のごとき訊問、呼出し、圧迫をどうすることもできない。勝田君という人のよい祕書をもってしても、「人間ではありません、獸です」と言っていた。ここに完全に堕落し切った末世日本がある。