五月十一日(木)
世界新秩序のことについて研究するため、まず中央公論社の「東亞共栄圈の諸問題」を読む。蝋山、東畑(精一)両君のを読み、また細川嘉六のものを読む。
蝋山君は驚くべき頭脳であるに拘らず、筆力なし。書いたものは平板である。細川君のものは面白し。が、問題を提起しているだけだ。
細川という人はマルクス主義者だというので、ずうっと横浜の留置場に入れて置かれているとのことだ。中央公論社の何の関係もなさそうな連中が、やはり引張られて半歳になる。そして、取調べに当るものは若い巡査だ。
日本人は今度の戰爭で教えられるところがあるかどうか。恐らく臥薪嘗胆といったことで、復讐心を養成するくらいなもので、ほんとに賢くはならないであろう。