引用:朝日
英公共放送BBCに政界から批判が相次いでいる。イスラエルを攻撃するイスラム組織ハマスを、「テロリスト」と呼んでいないことが理由だ。ただ、BBCは11日付の記事で「実直に、騒ぎ立てることなく事実を示し、視聴者に考えを決めてもらうのがBBCの仕事だ」としている。
ハマスはパレスチナ自治区ガザ地区を実効支配する勢力で、7日にイスラエルに越境攻撃を仕掛けた。英国のほか、米国や欧州連合(EU)が「テロ組織」に指定している。ただ、BBCはハマスについて、「パレスチナのイスラム武装勢力」などと呼んでいる。
英国のスナク首相は9日、「あいまいにしている場合ではなく、ありのままの表現で呼ぶべきだ」と非難。フレイザー文化相やシャップス国防相、クレバリー外相からも批判が出たほか、野党・労働党のスターマー党首も「BBCは説明する必要がある。私はテロリズム、テロリストと言ってきた」と語った。
BBCの編集指針では、「テロリスト」という呼称について「むしろ理解を妨げるものになりうる」と指摘し、「何が起きたかを描写し、視聴者に行為の結果を伝えるべきだ」と規定。たとえば加害者については「爆発犯」「誘拐犯」「襲撃者」「反乱者」といった具体的な名称を用いることにしているという。
外国特派員の経験が長い著名ジャーナリストで、BBCの国際報道の責任者を務めるジョン・シンプソン氏は11日、BBCに寄稿。「テロリズムは含みのある言葉で、人びとが道徳的に良しとしない組織について使う。誰が善人で、誰が悪人かを伝えるのはBBCの仕事ではない」として、自社の判断を擁護している。(ロンドン=藤原学思)