引用:東京新聞
政府が閣議決定した安倍晋三元首相の国葬に対する反対の声がやまず、識者や市民団体が声明や抗議行動を通じて撤回を求めている。なぜ、これほど国民は違和感を覚え、反発するのか。憲法学者の東京都立大・木村草太教授(42)の話を基に国葬の問題点を考察した。(坂田奈央)
◆「憲法の平等原則に違反」
憲法の平等原則は14条で、すべての国民は「法の下に平等」と宣言していることを指す。
木村氏は「『大きな実績』というのは、岸田内閣の主観的な評価にすぎない。国が行う儀式の対象とする以上、首相の功績の大きさは客観的評価が必要だ」と疑問を投げかける。
憲法14条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
②華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
③栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。
◆実績評価は第三者機関が政治から独立して行うべき
安倍氏と比べ、吉田氏以降の歴代首相の実績はどうだったのか。
例えば池田勇人氏は「所得倍増計画」を掲げ、日本を経済大国に押し上げた。佐藤栄作氏は沖縄返還を実現し、ノーベル平和賞を受賞。中曽根康弘氏は国鉄改革などを行い、外交ではレーガン米大統領と親密な関係で日米関係を基軸とした外交を展開した。
それぞれの実績には光と影がある。同様に安倍氏の大胆な金融緩和策をはじめとする「アベノミクス」や、集団的自衛権の行使容認などは評価が分かれる。森友・加計学園や桜を見る会などの問題も噴出した。在任期間は最長だが、安倍氏も「何日間在職したかではなく、何を成し遂げたかが問われる」と語っていた。
◆共感の要求は「思想信条の自由の侵害」にも相当
「公金使用を正当化する公共目的があるか」との点も木村氏は問題視する。