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清沢洌「暗黒日記」s19 毎日新聞が陸軍情報局に怒られた、その顛末?

今年二月二十三日の毎日新聞は「勝利か滅亡か」と題し、特別活字の記事を一面に出した。その中に「太平洋の攻防の決戰は、日米の本土沿岸で行われるものではなくして、教千海里を[#「教千海里を」はママ]隔てた基地の爭奪をめぐって戰われるのである。本土沿岸に敵が進攻し來るに至っては、もはや万事休すである」との字句があった。そして、この記事は、だから竹槍では間に合わぬ。飛行機だ。海洋航空機をつくれという論に続くものである。
 この記事を東條首相が、その日の午後三時ごろ読んで怒った。沿岸に敵が進攻し來るに至っては万事休す、とは何事だ。東京が焦土と化しても、国民はあくまで敵を滅ぼすために戰うのだと。
 情報局はあわてて午後三時半ごろ毎日新聞の発売を禁止すると同時に、翌日都下の新聞社の編集長を招致して、今後こうしたことのないように訓示した。また、陸軍省毎日新聞に鋭い警告を発し、かつその筆者(新名丈夫)が何人であるかを問うてきた。毎日新聞では筆者を出すことを謝絶し、編集局長の吉岡文六君が辞職した。

 

****jingoism.=偏狭な愛国主義、排外的愛国主義、盲目的主戦論、対外強硬論の意味で用いられる。

 これで問題は解決したものと思われた。事実、筆者の目的としたのは飛行機増産の急務を説いたのだし、その書き方もいかにジンゴイストの毎日新聞でも酷すぎるくらいだった。ところが、二、三日して、その筆者に突然徴兵令の赤紙が來た。同人は海軍省の出入り記者で四十一、二の男、兵役関係のない国民兵である。この人が徴兵されたのである。彼は丸亀に入隊した。これを聞いた海軍は怒った。海軍報道部員を無断で徴兵するとは怪しからんというので、丸亀に交渉して除隊させた。海軍の意思としては、彼を飛行機で南方につれて行く手筈をしていた。しかるに、その男は除隊された翌日、また徴兵された。いま丸亀にいるということである。
 この話ほど、東條の性格、陸軍のやりかた、陸海軍の関係を、いみじくも画き出したエピソードはあるまい。