中村格 ぷぷぷぷぷぷ
引用
昨年7月に発生した安倍晋三元首相銃撃事件は、政治と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係へと波紋が広がっていった。ただ、警察にとっては教団の問題よりも警護の失敗のほうが衝撃が大きかった。トップの辞任もあった警察庁の半年間を、関係者への取材からたどる。(肩書は当時)
「奈良で安倍元総理が撃たれたようだ」――。東京・霞が関の中央合同庁舎2号館にある警察庁への最初の知らせは、2022年7月8日午前11時31分の事件発生の直後に飛び込んできた。
奈良県警からの連絡を受けたのは、政治家らの警護警備の業務を所管する警察庁の警備局。情報は初めは断片的で、「ライフルで撃たれた」というものもあった。
当時、警察庁トップの中村格長官は公務で庁舎の外にいた。庁内にいたナンバー2の露木康浩次長はすぐに県警の鬼塚友章本部長に電話した。「その通りです」という回答が返ってきた。
「第2の襲撃」への備え
安倍元首相は心肺停止状態で容体はかなり重く、まだ現場にいる、撃ったとみられる人物はその場で確保した――。
そう報告を受けた露木次長は、「他に負傷した人は本当にいないのか」「犯人は本当に1人なのか」と確認し、警戒を怠らないよう鬼塚本部長に指示した。
警備局では、警護を担当する警備1課・警護室の付近に桜沢健一局長や幹部らが集まった。そして、職員と県警の間で続く電話のやりとりを見守る。事件の捜査を所管する刑事局も、捜査1課の担当者が県警との電話連絡に追われた。
警察庁内には、大きな災害や事件が起きた場合にだけ特別に使われる「対策室」と呼ぶ部屋がある。モニター画面などが備わり、現地からの情報や映像を受けて、対応を練るためのスペースだ。まもなくここが開設され、露木次長や警備局の幹部たちが詰めた。外から急ぎ戻った中村長官も陣取った。山上徹也容疑者の身上や組織性の有無といった情報を集約。「第2の襲撃」への備えとして、全国の警察に警戒の指示を飛ばした。
「統一教会に恨みがあった。教団とつながりのある安倍元首相を恨んでいた」
逮捕直後の弁解録取の手続きで山上容疑者が語った内容は、警察庁にもすぐに報告されてきた。
供述からは、安倍元首相の政…