5月末で閉鎖される大阪コロナ大規模医療・療養センター(2021年11月撮影、大阪市住之江区で)
大阪府が新型コロナウイルス対策で開設した国内最大の臨時医療施設「大阪コロナ大規模医療・療養センター」(大阪市住之江区)が、5月末で閉鎖される。約60億円をかけて1000床を運用したが、利用者は1日最大70人、累計でも約300人にとどまった。変異株「オミクロン株」は重症化しにくく、利用を想定していた若い世代の多くが自宅にとどまるという誤算があった。(小栗靖彦、山本貴広) 【グラフ】施設の使用率はさっぱり上がらなかった
吉村洋文知事がセンターの開設を表明したのは、感染が拡大していた昨年8月下旬。当時は30~50歳代が自宅療養中に死亡する事例が全国で相次いでおり、若い世代に医療の目が届く受け皿を提供する狙いだった。
大阪・南港の大型展示場「インテックス大阪」に、無症状・軽症用800床と中等症用200床を整備。人の移動が活発になる年度替わりの感染拡大に備え、会場は5月末まで押さえた。
今年に入り、オミクロン株の流行で感染者が急増。1月24日には病床使用率が50%を超えたため、同31日から運用を始めた。
対象は原則40歳未満の自宅療養者に限定。保健所が入所を決めるのではなく、希望者が府のコールセンターに申し込む仕組みだった。
しかし、蓋を開けてみれば、利用者はゼロか1桁が続いた。2月15日からは、無症状・軽症用の対象を60歳未満に引き上げたが、1日のピークは3月10日の70人で、受け入れ最終日の4月30日までの3か月の累計でも303人となった。
なぜ利用が低調だったのか。府幹部は「新たな株の特性を予想できず、ニーズに応じた軌道修正もできなかった」と振り返る。
府の分析では、デルタ株が猛威を振るった「第5波」(昨年6月21日~12月16日)の重症化率は1%だったが、オミクロン株が流行した「第6波」(昨年12月17日~)では0・12%に激減。このため、感染しても自宅にとどまった人がほとんどだったとみられる。
府内の自宅療養者は3万人余りだったセンター開設時から増え続け、ピークの2月16日には7万5805人となった。宿泊療養用ホテルの利用も低調だった。