共和党ブッシュ、ビリー・トーザンらによる処方箋薬関連法批判。
マイケル・ムーア「シッコ」が描いている。
解説:2014 年 10 月 27 日 全 6 頁
米国の公的医療保険、メディケア(その 1)
https://www.dir.co.jp/report/research/economics/usa/20141027_009074.pdf
引用:jilj
医療保険法(メディケア)改正案、両院を通過
2003年1月に、ブッシュ政権が提案した高齢者・障害者向け公的医療保険制度(メディケア)に関する改革法案は、上院および下院での審議を経た後、6月27日に両院を通過した。このメディケア制度改革は、大統領選挙を2004年に控えたブッシュ政権が掲げる、大型減税にならぶ重点的経済政策といえる。今後さらに議会での審議を経ることになるが、大統領が署名すれば、早ければ、7月中に改革法が施行以来38年ぶりに成立することになる。
改革法案の内容
米国における医療保険の適用については、1.貧困者を対象とした高齢医療保険制度(メディケイド)、2.高齢者を対象とした医療扶助制度(メディケア)、3.無保険者、4.使用者が提供する民間医療保険に加入する場合に大別される。このうち無保険者は、国民の6分の1を占めており、医療保険制度の最大の問題点となっている(本誌2003年4月号参照)。クリントン政権時代には、国民皆保険が提案されたこともあったが、これは財政負担の拡大を理由に議会が反発し、実現を見ることはなかった。その後、民間医療制度として「医療管理(マネージド・ケア)」制度が導入されたが、これにより医療の質を落とさずに費用の削減を図る医療の効率化を目指している。
今回のメディケア改革法案では、1.価格の高騰が著しく、個人にとっても、企業にとってもコスト負担となっている処方箋薬について、政府が補助を行うことに加え、2.公的医療保険制度に、HMO(Health Maintenance Organization)に代表される民間医療保険のマネージド・ケアと連携してこれを導入すること、の2点がポイントとなっている。
今回、ブッシュ政権がめざす改正のフレームワークは、3月に発表されており、その具体的内容は以下の通りである。1.高齢者は、処方箋薬について政府の指定なく、自分の必要な医薬を使用できるようになる、2.議会メンバーや連邦従業員と同様に最も適切な医療プランを選択できるようになる、3.必要な治療を彼らの希望する医師、病院などで受けることが出来るようになる、4.ガン、糖尿病、骨粗しょう症の予防のための検査を全額補助する、5.高齢者にとって高い費用の自己負担をなくすようにする、等5つのポイントの達成を目標としている。メディケアの近代化と改善のためにブッシュ政権は、今後10年間4000億ドルの補助金を予算化する意向である。
上院、下院での審議の経過
上院と下院ではそれぞれの委員会で医療保険制度改革案が審議されたが、審議された内容は下記のとおりであった。
上院 | 下院 | |
---|---|---|
保険適用下限額 | 275$ | 250$ |
月額掛け金 (個人負担) |
35$ | 35$ |
第1段階 | 276$~4,500$ 半額負担 |
251$~2,000$ 80%保険適用 |
第2段階 | 4,500$~5,100$ 全額個人負担 |
2,000$~5,100$ 全額個人負担 |
第3段階 | 5,100$~ 90%保険適用 |
5,100$~ 100%保険適用 |
そのほか | 実施は2006年より。それまでのつなぎとして15%から25%までの割引カードを支給。 | 6万ドル以上の収入がある高齢者には適用除外の制度や限度額の設定の変更などを設ける。 |
各改革法案は、両院をそれぞれ通過したが、その後法案を調整する必要から協議会を開催して改正内容の一本化が予定されている。
改革法案への労働組合の反応
まず労働組合ナショナルセンターであるアメリカ労働総同盟・産業別会議(AFL-CIO)は、今回の改正は、政府による巨額の補助により経営者出資による保険グループに弊害を及ぼすことが危惧され、また、何百万の高齢者の医療費負担の救済措置となると政府はいっているが、実際には個人負担についての定義が非常に狭義であるため、退職者への医療保険の経営者の負担を軽くすることになるだけで、その利益が確保されていると断言できない。今後協議会の議論を通じて改正法案の改善に努める必要があると強調している。
今年は、労働組合の労働協約改定が予定されており、退職者への医療保険の取り扱いは労使交渉の大きなテーマとなっている。その意味でも、今回の法改正の今後の動向は多いに注目される。