引用
「ズル」をしていたのは政治家だった 「人々の不信と不満の矛先が変わった」と明治大の重田園江教授
2024年8月11日 06時00分
―自民党派閥の裏金事件などで政治への不信感が高まっている。
「昔は『政治的無関心』という言葉が注目されたが、今は『政治不信』に取って代わられている。有権者は政治に関心を持った上で、その信頼性を疑問視している。ただ、行政機関としての政府が完全に信頼を失ったとまでは思えず、不信の矛先はやはり政権を運営する与党、特に自民に向かっているのだろう」
重田園江(おもだ・そのえ) 1968年、兵庫県西宮市生まれ。早稲田大卒業後、日本開発銀行を経て東京大大学院博士課程単位取得退学。99年、明治大専任講師などを経て現職。2023年から政治経済学部・政治学科長も務める。専門は現代思想・政治思想史。主な著書に「ミシェル・フーコー—近代を裏から読む」など。
◆安倍政権の終わりが境目に
―いつから自民へ不信が強まっているのか。
「安倍政権の終わりが、転換点だったと思う。競争原理を優先する新自由主義が台頭した10年余り前の第2次安倍政権のころは、自己責任論が唱えられ、人々の不平不満は自分よりも弱い立場にある『下』の人たちに向けられていた。例えば『生活保護をもらって暮らすのはずるい』や『障害者への福祉が手厚すぎる』といったように。結果的に政治に不信の目が向けられない状態が続いた」
―その後、なぜ有権者の目線が変わったのか。
「安倍晋三元首相が亡くなった後、メッキがはがれるように『アベノミクス』の虚像が見えてきて、安倍氏も誘致に力を入れた東京五輪・パラリンピックを巡る汚職・談合事件も発覚し、不信や不満の矛先は既得権にまみれた政治家や富裕層という『上』に向かいつつある。旧統一教会の問題や裏金事件も次々と明るみに出た。『ずるをしていたのは、実は社会の支配層だったのではないか』という空気が広がってきた」
◆反対を掲げるだけでは…
―受け皿となるはずの野党は心もとない。
「政治に不当に扱われていると感じる人の声をすくいあげ、自らの政治勢力の拡大にどうつなげるかは当面の焦点になるし、うまくいけば政治が変わる可能性はある。だが、与党への反対を掲げるだけの野党では力を持ち得ない。1人でも強烈なリーダーが現れれば局面は変わるが、立憲民主党にも日本維新の会にも現時点では見当たらない」
―政治不信が政権交代に直結していない。