引用
「もっと早く報告してほしかった。報告を受けてから、私の指示通りに動いてくれていたら、もしかしたら（取引再開など誤った判断を）避けられていたかもしれない」
中古車販売大手ビッグモーターの保険金不正請求は、取引関係にあった損害保険ジャパンの白川儀一社長の辞任劇に発展した。冒頭の発言は9月8日の記者会見で、親会社のSOMPOホールディングス（HD）の桜田謙悟会長兼グループ最高経営責任者が発した言葉だ。
この発言は桜田氏が白川氏の経営能力に疑問を呈し、持ち株会社トップとしての経営判断に自信を示した格好だ。そんな自信に満ちた桜田氏は白川氏からいつ報告を受け、どんな指示をしたのだろうか。
経済誌報道であわてて報告
損保ジャパンは2022年1月、ビッグモーター社員の通報をきっかけに事故車両の修理代金水増し疑惑を把握。損保ジャパンなど損保大手3社は同6月に事故車両をビッグモーターの修理工場に紹介する取引を停止した。
ところが、白川氏は同7月6日の損保ジャパンの役員会議で「事実関係としては『クロ』が推測されるが、ビッグモーターに厳しい調査を求めると関係が悪化し、元の状態に戻れない可能性が高い」と発言し、取引再開を決めた。白川氏はこれを「大きな経営判断ミスだった」として引責辞任を表明した。
SOMPOHDによると、桜田氏にビッグモーターの一連の問題が報告されたのは同8月31日。白川氏の発言を受け、損保ジャパンが取締役会の議決も経ないまま、同7月25日にビッグモーターとの取引を再開した後だった。
同8月31日は経済誌がビッグモーターの不正を報じた直後だった。桜田氏は「ビッグモーターが我々の大きな代理店であるということも経済誌の記事で初めて知った」という。
損保ジャパンは経済誌の報道を受けて、桜田氏にあわてて報告したようだ。白川氏は出張中で、別の役員が桜田氏に「損保ジャパンとしては、組織ぐるみの不正とは見なせないので、ビッグモーターとの取引を再開した」と説明したという。
「社外取締役などガバナンス強化」を求めたが
これに対して、桜田氏は何と指示したのか。桜田氏によると「組織的な関与が…
