21億円の横領事件で疑いをかけられ大阪地検特捜部に起訴されて、その後の裁判で無罪が確定した不動産会社の元社長が国を訴えていた裁判で、特捜部が行った取り調べの録音録画について大阪地裁は提出するように命じる決定を出しました。特捜部の取り調べの録音録画に文書提出命令が下されるのは初めてのことです。 ■【動画特集】プレサンス元社長の“冤罪”事件 特捜部を詳しく知る関係者が語る検察の現実 不動産会社「プレサンスコーポレーション」の元社長・山岸忍さんは、学校法人との土地取引をめぐり部下らと共謀して21億円を横領したとして、2019年12月に大阪地検特捜部に逮捕・起訴されました。 この事件の刑事裁判で、検察側は山岸さんの有罪を立証するために、部下や関係者が山岸さんの事件への関与を証言した供述を証拠として提出しましたが、裁判の中で、特捜部による山岸さんの部下に対する問題のある取り調べが明らかになりました。 特捜部は、長時間にわたって厳しい態度や言葉で責め立てる取り調べを行っていて、この取り調べで引き出された供述は「信用できない」と判断され、山岸さんの無罪が確定しました。 その後、山岸さんは「違法な捜査で冤罪を作り上げた」として、国に損害賠償を求める国家賠償請求訴訟を起こしていました。 この裁判の中で、特捜部の取り調べの録画録音の提出を国に対して求めてきましたが国側は拒否。山岸さん側は裁判所に対して提出命令を出すように求めていました。 申し立てを受けた大阪地裁は19日、国に録音録画の提出を命じる決定を出しました。 弁護団によると、裁判所が地検特捜部の取り調べの録音録画に対して、提出命令の決定を出すのは初めてのことです。 山岸さんは決定を受けて、以下のようにコメントしました。 「国、検察庁は自分たちのした行為が問題となっているのですから、裁判所の命令に従って正々堂々と録音録画を提出すべきだと考えます。この事件に限らず、最近ではほかの事件でも、特捜部の検事による捜査について次々と問題になっています。検察官の問題のある行為については、国民の目に触れさせることによって改善されなければなりません。国が文書提出命令に抵抗して不服申し立てをすることにより、これ以上裁判を長引かせることは、はっきり言って税金の無駄遣いです。国と検察は、自分たちの行為を振り返って、まずはきちんと反省すべきだと考えています」