重症患者の急増で、最悪の場合の対処方針が必要に。小池百合は菅首相との争いに血道を上げて、トリアージなどの方針を決め上げるための、真摯な都民の議論起こしにまったく手を付けず
youtu.beカルタに興ずる婆
引用:文春
都庁はこの状況を1カ月前から分かっていたはず
田中 都庁は1カ月前から分かっていたようです。東京都の新型コロナウイルス感染症モニタリング会議が「年末年始に日々の新規感染者数が1000人を超える。重症者は2倍になる」という情報を、都知事サイドに示していたはずです。感染者がじわじわ増えるのではなく、いきなり突き抜けるようにして増えるという予測です。その情報については、私も間接的に耳にしました。
――都民には知らされませんでした。
田中 小池百合子知事が熱心だったのは、政府との水面下の駆け引きでした。隣接3県の知事を抱き込んで国と対峙するとか、そのようなことばかりやっているようにしか見えませんでした。
――結局、感染拡大は「予測」通りになりました。
「命の選別」を現場に押し付けていいのか
田中 その結果、指定病院から重症者があふれ出しています。平時には、どんな患者にも全力を挙げるのが「医の倫理」でしょう。ところが、それができなくなってしまったらどうするか。 人工呼吸器やエクモといった医療資源、これを扱う医療従事者には限りがあります。患者がどっと押し寄せると足りなくなる。その場合には、治癒が期待できる人を優先すべきだ、というのがトリアージの考え方です。「命の選別」に当たるとして反対する人もいます。しかし、きれいごとでは済まない現実が目前に迫っています。戦場や災害現場と同じ状況に陥りつつあるのです。 そうした時に「この人から人工呼吸器を外して、あの人に付けないといけない」という判断を現場の医者に押しつけていいのか。そんなことを強いていては、医者が精神的に参ってしまい、医療崩壊の前に「医療人材の崩壊」が起きてしまいます。
――そもそも、感染症対策は都道府県知事が中心になって行うことになっています。
田中 しかも、都内で最も重要な指定病院は「都立」です。都立病院の責任者は都知事なのだから、組織のトップとしても責任を果たすべきなのです。「命の選別」の責任は、現場の医者ではなく、都知事として背負わなければなりません。その危機意識が感じられないのが残念です。
東京都は重症者の情報を公開せよ
――具体的にはどうすればいいですか。
田中 まず、情報公開が必要です。東京都は死者数こそ毎日発表しているものの、重症者がどうなったかの発表はしていません。膨大な情報は蓄積されたままになっています。 例えばの話ですが、年齢を5歳刻みなどで、生還率や死亡率を示します。人工呼吸器などを装着して外せるまでの日数も重要なデータではないでしょうか。基礎疾患との関係もあります。これらデータや症例を、一般に分かりやすく公開するのです。もちろん個人が特定できないようにするのが条件です。 そうすると、人工呼吸器などを付けても延命にしかならないようなケースが見えてくるかもしれません。逆に救える患者の傾向が分かってくるようなことがあればと期待します。 これらをたたき台にして、都民の皆で考える材料にします。そうしたうえで、学会や有識者に相談しながらガイドライン化していくのです。いずれにしても急がなければなりません。